子の引渡し
子どもをもつ夫婦が別居したときや離婚して別に暮らすようになったとき、離れて暮らす親が子どもを連れ去ってしまうことがあります。このような場合、当事者同士の話合いでは解決しないことが多いため、監護権者である親は、家庭裁判所への調停、審判を通じて子どもを自分に引き渡すように求めることができます。ただし、「子の引渡し」は、引き渡される子ども側からすれば、現在一緒に暮らしている親と離れなければならない、住んでいる場所からも引っ越さなければならない、などの不利益が伴う場合があります。ですから、子の引渡請求の判断にとっては、子どもが現在置かれている状況などを考慮し、子ども自身の幸せを第一に考えることが大切です。したがって、子ども自身の意思を尊重するとともに、子どもの成育環境、父母の監護能力や経済力、健康状態、居住環境などの事情も考慮されます。なお乳幼児であれば、特段の事情がないかぎりは母親と一緒に暮らしたほうがいい、とされています。ですから、母親の浮気が原因で離婚に至ったとしても、子の引渡請求に影響はありません(浮気相手に夢中になり育児を放棄していた場合などは別です)。ただ、以上のような過程を経て、調停や審判で子どもを引き渡す結論が出たとしても、相手方がかたくなに拒んでいる場合、現実に子どもを取り戻すのは容易ではありません。このようなケースのときには、裁判所に強制執行を申し立てることができます。その方法には「間接強制」と「直接強制」の2種類があります。間接強制は、引き渡さない親に対し、「引き渡すべき日までにつき◯◯円を払え」という内容のいわば罰金の支払を命じる方法です。それでも支払わない場合は、財産の差押えも可能です。直接強制は、裁判所の執行官が、現地に赴き、直接子どもを引き取る方法です。ただし、ここでも子どもが嫌がるケースもあり、あくまでも子どもの気持ちに配慮することが一番大事です。