家庭裁判所に判決を下してもらう ―裁判離婚の場合
裁判離婚は、協議離婚、調停離婚すべてが成立しなかった場合、離婚訴訟を起こし、裁判所が判決を下すものです。日本では法律上、調停前置主義が採用されており、裁判をするにあたってはあらかじめ調停をし、話合いがまとまらずに「不調」に終わっていることが離婚裁判をする条件となります。離婚裁判を起こすには、以下の法的に認められた離婚の理由(法的離婚事由)が必要です。・不貞行為(浮気)・悪意の遺棄・3年以上の生死不明・回復の見込みのない強度の精神病・その他婚姻を継続しがたい重大な事由離婚請求は、未成年の子どもがいる場合には、親権者をどちらかに指定する必要がありますので、親権者をどちらに定めるのかを記載するとともに、養育費や財産分与、慰謝料などの請求を併せて行うことができます。離婚訴訟を提起するにあたっては、訴状を作成し、夫婦どちらかの住所の管轄の家庭裁判所へ提出して訴訟をします。協議離婚や調停離婚においては当事者間だけで行うことがありますが、離婚訴訟までいくと、なかなか自分で対応するのはむずかしいため、弁護士に依頼される方が非常に多いです。家庭裁判所に訴えの提起をすると、1回目の口頭弁論の日にちが決められ、相手方(被告)に口頭弁論期日呼出状が送られます。同時に被告には、訴訟を起こした人(原告)が裁判所へ提出した訴状の写しが届きます。被告は原告が作成した訴状を見て、それに対する反論の書類(答弁書)を作成します。1回目の口頭弁論では、訴状(原告がつくる)、答弁書(被告がつくる)の内容を確認し、裁判所が問題点を整理して、夫婦(原告と被告)それぞれに反論があれば書面(準備書面)にまとめて証拠と併せて提出するように指導があります。2回目以降の口頭弁論は月1回程度のペースで開かれ、双方の主張を出し合います。原告・被告が作成した準備書面の内容を確認し、食い違いがあれば、提出した証拠、尋問などを通じて事実を確かめていきます。本人(原告)尋問の場合、主尋問(原告側の弁護士から原告へ質問する)、反対尋問(被告側の弁護士から原告へ質問する)、裁判官からの質問を行い、被告の尋問についても同様に行います。財産分与の請求をする場合、財産分与の対象となるのは、夫婦共有財産であり、夫婦どちらの名義であるかにかかわりません。また、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定されます。具体的には、夫婦いずれかの名義であり(ただし、未成年の子の名義であっても、夫婦の支出による財産などは夫婦共有財産に含まれます)、婚姻期間(婚姻から別居の日まで)に形成された財産です。婚姻前に形成された財産や、婚姻期間中であっても相続等で得られた財産は、特有財産であり、夫婦共有財産には含まれません。夫婦共有財産の具体例としては、不動産、車、預貯金、有価証券、投資信託(解約返戻金)、生命保険(解約返戻金)、学資保険(解約返戻金)、企業年金、退職金、住宅ローン、負債などが挙げられます。退職金や企業年金については、すでに支給されている場合には財産分与の対象となります。将来支払われる退職金については、近時財産分与の対象とする傾向にあります。しかし、数十年後に退職するような場合には、今後の勤務状況や会社の経営状況などに不確定な要素が多く、対象とならないと判断される可能性が高いです。夫婦共有財産の価格は、別居日を基準とします(別居せずに離婚した場合は離婚が成立した日)。したがって、預貯金や負債などは別居日の残高が明らかになる通帳コピーまたは残高証明書などが証拠となります。保険等の解約返戻金の証明書を取得する場合には、別居日を指定して取得する必要があります。不動産については、別居日ではなく、現在(離婚時)の実勢価格の査定書で足りるとする取扱いがなされることが多いです。なお、不動産の価格について、当事者に争いがある場合には、鑑定が行われる場合もあります。鑑定による場合、ある程度信頼できる価格が得られるというメリットがある反面、時間と費用がかかるというデメリットがあります。分与の割合は原則として2分の1です。裁判の終了方法には、「判決」(原告の離婚請求を認めるか否かを決定すること)と「和解」(裁判官が仲介役となって双方が納得できる解決策を見出すこと)があります。こうして判決確定、和解成立した場合、離婚が成立します。これに対して、裁判によっても離婚が成立しなかったり、離婚は成立しても慰謝料などで希望する額の支払が認められなかった場合などは、これを不服として控訴の申立てをすることができます。控訴の申立ては訴訟をした家庭裁判所の上級の高等裁判所に申し立てます。控訴を提起できる期間は判決書が届いてから2週間です。控訴審でも望ましい結果を獲得できなかった場合、次は最高裁判所に上告することとなります。判決で決着した場合、判決書が送られてきた日から2週間以内に被告が控訴しなければ判決が確定し、判決が確定するのと同時に離婚も成立します。判決が確定してから10日以内に、「判決書謄本」「判決確定証明書」とともに離婚届を市区町村役場へ提出します。和解で決着した場合、裁判所によって「和解調書」が作成されると同時に離婚が成立します。和解が確定してから10日以内に、「和解調書謄本」とともに離婚届を市区町村役場へ提出します。ちなみに、判決・和解ともに離婚届に相手方の署名捺印は必要ありません。和解や判決で離婚が成立した場合で年金分割を認める条項があったとしても、自動的に年金分割がされることはなく、当事者が判決書謄本、判決確定証明書、あるいは和解調書謄本を持参して年金分割の請求をしなければなりません。離婚成立日の翌日から2年以内に請求することが必要ですので、注意してください。