交渉で合意ができたら示談書を作成する
・示談書と示談交渉の最後の仕上げ紆余曲折を経た示談交渉も、当事者で合意ができれば、示談書を作成することで、すべて完了します。示談書は、当事者の間で自由に作成でき(これを私製の示談書と言います)、交渉は代理人によってもできますが、委任状がなければ無効となるおそれがありますので注意してください。大事なことは、示談書の署名捺印は、必ず当事者本人がすることです。示談の内容が、金銭の支払いを目的とするものである場合は、示談書に署名捺印すると同時に、金の受け渡しをすることで示談は終了しますので問題はありませんが、〇か月後に示談金〇〇万円を支払うという場合や、毎月•万円を10回に分けて支払うというような分割払いの場合には、私製の示談書では十分ではありません。示談書に書かれたことを債務者が実行しない場合、私製の示談書では、これを証拠として民事裁判を起こし、判決をもらわないと、債務者の財産に対して競売などの強制執行をすることができないからです。このような場合には、後に述べる方法、すなわち示談書を公正証書にするか、裁判所に申し立てて和解調書を作成してもらうことが必要です。私製示談書には、強制執行力はありませんが、公正証書による示談書や和解調書には強制執行力があるからです。 ・野談書を作成するときに注意すること示談書を作成するには、いくつかのポイントがありますので、述べておきましょう。示談書作成でミスを起こすと、せっかくの苦労が水泡に帰すことになりますので、ハンコを押す前に専門家にみてもらうのは良い方法です。①示談の対象となった事実関係を必ず特定すること。たとえば、「令和•年の1年分の売掛金」では特定したことになりません。面倒でも「令和〇年〇月〇日の〇〇を売却した代金」というように、全部を書くことが必要です。交通事故の場合は、日時、場所、車のナンバー、運転者など詳細に書くことが必要です。②示談の締結により、当事者間に債権債務の関係がもはや存在しないことを確認する旨の一項目を入れておくこと。③分割払いの場合には、支払いを1回でも怠った場合には全額支払う、あるいは違約金として〇〇万円を支払うなどの違約条項を入れておくこと。④交通事故の示談の場合には、損害金の中に保険金が含まれているかどうかの条項、また後遺症が発生した場合には示談のやり直しができる旨の条項も必要です。なお、実現することが不可能なことや公序良俗に反すること(代金の支払いに代えて同棲することなど)を喜くと、示談は無効となりますので注意してください。⭐︎ポイント間違っても金の受け渡し前に示談書にハンコを押さないこと。