解約する場合の違約金とは何かある探偵業者に夫の浮気調査の依頼をしたのですが、やはり不安になったので、翌日に解約したいと告げたところ、解約する場合には違約金を支払わなければならないと言われました。違約金とはどのようなもので、どのくらい支払うことになるのでしょうか。
2025/09/05
口違約金違約金とは、当事者の一方が、一方的な都合で契約を解約する場合に、相手方が被った損失をカバーするためのもので、ホテルやツアー旅行のキャンセル料と同様の性格のものです。口解除・解約とは「解除」「解約」とは、契約関係を解消する契約がなかった状態に戻すことで、賃貸借契約や委任契約のように継続的な契約関係の場合に、「解約」という言葉が用いられます。一般に、法律の規定する解除・解約の要件がない限り、相手方の了解なしに勝手に解除・解約できるわけではありません。民法の規定する一般的な解除の要件は、契約の相手方に、契約を履行しない同法五四一条、履行遅帯、あるいは、履行が不可能となった同法五四三条、履行不能などの債務不履行があり、契約の目的を達成できない場合です。ご質問のケースでは、探偵が依頼した調査を進めない場合が前者で、探偵が不用意に調査対象者に接触したため、相手が管戒して不倫相手との密会を中止してしまい、調査不能になってしまったような場合が後者です。このほか、契約類型に応じて、解除・解約の要件が規定されています。たとえば、民法は、期間の定めのない賃貸借契約については、当事者の申入れによって解約することができるとし民法六一七条、さらに借地借家法は、建物の賃貸借契約について、この民法の規定を修正し、質貸人からの解約申入れについては、賃貸人に建物の使用を必要とする事情があるなどの正当の事由がなければ認められないとしています借地借家法二八条。口探偵・興信所との調査契約の場合探偵・興信所との調査契約は、通常は、民法上の請負契約民法六三二条または委任契約同法六四三条に当たると考えられるところ、民法は、これらの契約について、相手方の債務不履行がなくても、解約により相手方が被る損害を賠償することを条件として、一方当事者からの解約を認めています同法六四一条・六五一条。ですから、民法上は、調査の必要がなくなったとか、調査することが不安になったなどの依頼者側の都合で解約することが許されます。とか『解約の際の害の支払い探偵・興信所との契約において、違約金と呼ばれているものは、法的には、解約に際しての損害賠償額の特約として、契約金額の一定の割合を支払うことを規定したもの、と考えられます。解約の場合に実際に被る損害を計算するのは互いに面倒ですから、契約金額の一定割合の損害が生じると仮定し、その金額を支払うことにより、契約関係を清算しましょう、ということです。口違約金の額違約金の額の定め方について、探偵・興信所業界に共通のルールのようなものはなく、各探偵・興信所がそれぞれ独自に決めています。多くの探偵・興信所は、電話帳やホームページに競い合うように大々的な広告を出し、多様な調査内容、見積無料、低料金、明朗な料金体系などをうたっています。しかし、違約金についての説明はなく、実際に契約する際に初めて、調査契約書等の書類の記載または口頭での説明により、解約にあたって違約金の支払いを要することとその内容が示されることが多いようです。中には、違約金に関する事項を一切説明しないまま、契約に至るケースもあります。調査契約書等の書類に違約金に関する記載がある場合、次のように、解約の時期が後になるにつれ、段階的に違約金の額が増大するように定められていることが多いようです。調査開始予定日より•日前までの解約の場合は、契約金額の•%の違約金をお支払いいただきます。調査開始予定日前日までの解約の場合は、契約金額の•%の違約金をお支払いいただきます。調査開始日及び調査途中での解約の場合、契約金額を超えない範囲で、調査日数分の費用をお支払いいただきます。調査契約書等に違約金の割合が記載されている場合、どのような根拠に基づくものかは不明ですが、契約金額の八パーセントと記載されていることが多いようです。しかし、実際に解約した場合に請求されている数字は、八パーセント、二〇パーセント、三〇パーセント、五〇パーセントなどまちまちです資料0②参照。過大な違約金は、消費者契約法の適用を受けることになります本章Q6参照。違約金が、探偵・興信所が被った損失をカバーするためのものであるという性格を考えると、探偵・興信所が調査着手のために機器を購入したとか、実際に調査に着手して相当の費用を費やした場合は別として、前記のような高率の違約金は、違法である場合が多いと考えられます。ご質問のケースでは、契約締結の翌日に解約したということですから、解約金を支払わなくてよいことも十分に考えられます。
興信所から紳士録の買い取りを求められたがどうすればよいか興情所から「掲載料は無料ですから紳士録にあなたの名前を掲載しませんか」と勧誘を受け、後に高額な紳士録の買い取りを求められました。その金額があまりにも高いので購入したくないのですが、どう対応すればよいでしょうか。
2025/09/05
口紳士録商法ご質問のケースは「紳士録商法」といわれるものです。「紳士録商法」とは、頼んでもいないのに紳士録を一方的に送り付けたり、勘違いをさせるような説明をして紳士録を買うようにしむけたりして代金を請求する商法です。この紳士録商法を行っている業者が探偵・興信所を名乗っているケースもあります。紳士録商法には、大きく分けて次の三つのものがあります。第一の手口は、「紳士録の更新時期がきている。更新するためにはあるいは、紳士録からあなたの情報を消するには、多額の費用がかかる」と言って脅し、金銭を恐喝する手口です。本当は紳士録を更新するか否か明らかではありません。また、抹消するのに費用はかからないはずなのに、多額の費用がかかると言ってきます。第一の手口は、「掲載料は無料ですから紳士録にあなたの情報を掲載しませんか」と勧誘し、後から高額な紳士録の買い取りを求める手口です。第三の手口は、「紳士録の購入をしませんか」というダイレクトメールが送られてきたので、同封されている回答用のハガキの「購入しません」という欄にチェックを入れて返送すると、紳土録が送られてきて、高額な金銭が請求される、というものです。回答用のハガキが、よく読んでみると、「次回から購入しません」という意味になっているのです。口対処法ークーリング・オフ等ご質問のようなケースでは、毅然とした態度で対応し、代金の支払いを拒否すべきです。いったん要求に応じると、次々と要求がエスカレートしてくることも少なくありません。なお、勧誘が電話による場合には、特定商取引法では、紳士録への掲載業務は指定役務とされていますので同法施行令三条・別表三、同法の適用対象となり、契約後八日間はクーリング・オフをすることができます同法二四条。 チラシやダイレクトメールによる勧誘の場合には、 同法の通販売の規制が及ぶことになります。クーリング・オフは、法律で定められた期間内に契約を解除する旨の書面を送付する方法により行います。契約解除の効力は書面を発送した時点で生じることになっていますので、期間経過後に書面が到達してもクーリング・オフの効力に影響はありません。クーリング・オフをするための書面に法律上特に制限はありませんが、後日トラブルになったときのために書面を発送したことを確実に立証できるよう、配達証明付内容証明郵便を利用することが得策です。勧誘が執拗に続くような場合には、近くの消費生活センターへ相談するとよいでしょう。
探偵・興信所によるトラブルはどのようなものか探偵や興信所に関するトラブルは、実際にどのようなものなのでしょうか。実例を教えてください。
2025/09/05
ロトラブル事例探偵・興信所に関するトラブルにはさまざまなケースがありますが、実際の例をみると、次のように大別できます資料0②参照。① 解約をめぐるトラブル契約を解約したが返金してくれない、解約しようとしたら法外な違約金を請求されたなど本章Q5・Q6参照。②債務不履行契約違反によるトラブル調査不十分なので納得できない、説明を受けていた調査をしてくれない、調査報告書を送付してくれない、連絡がとれなくなったなど本章Q8参照。高額な料金の合意に関するトラブル調査料金が高額すぎるなど本章Q7参照。当初の契約内容と異なる不当な請求に関するトラブル契約時の説明にはなかった追加料金や費用を要求されるなど。⑤恐喝依頼した探偵・興信所から、依頼者の秘密をネタに恐喝されるいわゆる「悪徳探偵」の典型例。本章Q11参照。⑥面談・契約締結をめぐるトラブル長時間執拗に契約締結を要求されたり、契約を断ったら暴言を吐かれるなど。⑦口止め料、情報の処分料等の名目で金銭を要求されるトラブル見知らぬ探偵・興所から突然、電話等で、「あなたの調査をした結果、不倫の事実が判明しましたが、〇〇万円払っていただければ依頼者に報告しないことにします」、「調査内容を公表されたくなければ、調査料と処分料を指定口座に振り込んでください」などと要求されるケースで、その中には、実際に調査しているケースと調査していないケースがあります。こうしたやり方は、恐喝または詐欺に該当する場合があります。⑧探偵による尾行や盗聴等の迷惑・プライバシー侵害、意味不明の電話、事業等に関する虚偽の情報の公表・報告など、契約関係にない探偵・興信所によるさまざまな迷惑・被害不法行為⑨化け調探偵・興所による古典的な詐欺商法として、「化け調」と呼ばれているものがあります。これは、実際は企業の肩用調査など依頼されてないのに、中小の下請企業に対し、「実は御社の言用調査をきる大手企業から依頼されました」などと、用調査を依頼れてきたかのように嘘を言い、「この機会に私どもの会員になりませんか」などと言って、興信所の機嫌を損ねたくない下請けの心理に付け込んで入会料を支払わせたり、肩用調査の回数券を買わせるなどする手法です。ちなみに、探偵・興信所の業界では、依頼者が実在して調査することを「本調」あるいは「A調」と呼び、依頼などされていないのに、興信所の会員になることを期待して会社訪問することを「化け調」あるいは「B調」といいます第一部第一章Q3参照。紳士録商法頼んでもいない紳士録を高額で買い取らせたり、高額の掲載料または抹消料を要求したりする商法で、探偵・興信所による古典的な商法の一つです本章Q4参照。人の弱みに付け込んだり、執拗に要求を繰り返したりして、払う必要のないお金を支払わせる点で、⑦の類型に類似し、詐欺または恐喝に該当する場合があります。総会屋の資金源ともなっていたようです。口どのようなトラブルが多い前述した①から@の類型のうち、①から③解約、債務不履行、高額代金のトラブルが圧倒的多数を占めます。料金が高額なので解約したら高額の違約金を請求されたとか①と多、調査不十分で納得できないので、解約してお金を返してほしいが相手が応じない②と@というように、①~色の要因が複合してトラブルが起きているのが普通です。探偵・興信所問題研究会で直接相談を受けた二七事例を分析したところ、巻末資料0のように、ほとんどが調査不十分による解約が問題になっている事案でした。また、大阪府消費生活センター本部が平成一二年から平成一七年までの間に相談を受けた事例のうち、探偵・興信所に関する事案約八〇件の概要を分析したところ、巻末資料②のように、やはり、トラブル要因は、解約、調査不十分、高額が多く、特に解約に関するものが多くなっています。コモラルの低い探偵・興信所の存在こうした被害事例の中には、探偵・興信所は最初から真面目に調査するつもりがないのに、もしくは、調査不可能と知りながら、確実に調査できるように装って、契約を締結しているとしか考えられないケースがあります。このような行為は、刑事上・民事上の詐欺に当たります。もちろん、こうした悪質な探偵・興所ばかりではなく、誠実で優秀な探偵・興信所もいるあるのでしょうが、一部には、相当にモラルが低い業者が存在することは確かです。探偵・興所においても、自分たちが世間からこのような目で見られていることを十分承知していて、大手の探偵社や興信所のホームページでは、悪徳探偵の実例や見分け方などが記載されており、自分のところとの違いが強調されています。しかし、そのような探偵・興信所から被害にあったという相談があるのも事実です。
探偵・興所をめぐるトラブルは多いのか探偵や興信所をめぐるトラブルの話は、私の周囲ではあまり聞かないのですが、トラブルになっている件数はかなりあるのでしょうか。
2025/09/05
ロトラブルの実情探偵や興信所にかかわるトラブルは、頻発しているとまではいえないかもしれませんが、探偵・興信所に依頼する場合の特質として、被害にあってもそれを他人に相談しづらいということがありますから、表に出てこない潜在的な被害を考慮すると、相当な件数の被害が発生していると考えられます。たとえば、[表1]~[表3]は、国民生活センターがホームページ上で公開している消費生活相談データベースから、「興信所」関係の相談を集計したものです。[表1]からは、二〇〇一年度から二〇〇六年度の途中までに合計六九六七件の相談があり、相談件数が毎年増加傾向にあることがわかります。ここに現れている数字は、探偵・興信所関係で何らかのトラブルにあっている人や不安を抱えている人のごく一部であり、いわば氷山の一角にすぎず、実際にはかなりの被害が発生していると考えられます。また、大阪府消費生活センターに寄せられた消費者相談でも、探偵・興信所関係の相談件数は除々に増加しているといえます次頁[表4参照。
探偵・興信所への依頼内容にはどのようなものがあるか探偵や興信所へ依頼される内容には、どのようなものがあるのでしょうか。
2025/09/05
探偵・興信所に依頼される内容の代表的なところでは、浮気調査、素行調査、身元調査所在調査、信用調査、人探し、裁判の証拠集め、ストーカー対策、響護・護衛などがあげられます。その他、探偵・興信所の広告やトラブルになった実例によれば、それを実際に、かつ、適法に行うことが可能かどうかは別として、盗聴器発見、防犯対策、セクハラ対策、銀行調査、電話番号調査電話番号から使用者の氏名・住所等を特定する、各種鑑定筆跡鑑定、音声鑑定、DNA鑑定等、ペット探し、恋愛関係にある男女を別れさせる別れさせ屋等の特殊工作など、極めて多彩です資料0②参照。コ典型的なトラブルただ、実際にトラブルになっている事例の大半は、浮気調査、素行調査、身元調査、人探し所在調査です。最も多く、典型的なトラブルは、①法外な高額でこうした調査契約が締結された後で、依頼者が料金の高さと不審感から解約を申し出ると、高額の違約金を要求してくる事例と、②尾行等の調査活動に失敗し何の成果も上がらないなど、調査があまりにずさんで、ろくな報告書も提出しないため、調査料金の返金を求めると、それを拒むという事例です本章Q3参照。
各地に調査業協会という組織があるそうですが、これはどのような団体ですか。トラブルが起こったとき、相談に乗ってくれるのでしょうか。
2025/09/05
口日本調査業協会任意にすぎなかった業界四団体が統合し、これが母体となって昭和六三年九月に政府の許可を受け設立されたのが、細日本調査業協会です。同協会は、警察庁を監督官庁とした全国組織で、全国に二三カ所の地方単位協会東京都調査業協会、大阪府調査業協会等があり、約六〇〇社あまりの加盟員探偵事務所・調査会社・興信所を擁しています同協会ホームページ参照。調査業協会とは何か口活動内容日本調査業協会は、その説明によれば、「調査業務の適正な運営を確保して、調査業の健全な発展を図り、もって国民の権利及び自由の保護その他公共の安全と秩序の維持に寄与すること」を目的とし、目標達成に向けて委員会を設け、地方単位協会との連携でさまざまな活動を行っており、教育研修会を通じて会員の質的向上と倫理の徹底を図り、消費者保護の立場で苦情処理を行うなど、常に探偵調査業界の健全化に努めているということです。また、各地の支部では地元の警察署や消費生活センター、あるいは自治体の窓口などを訪問して意見を求め、探偵・調査にかかわる無料相談も受け付けているとしています。口相談・苦情処理このように日本調査業協会や各地の調査業協会では苦情処理も業務の一つとして取り組んでおり、探偵・興信所とのトラブルが発生したときには相談に乗ってくれます。しかし調査業協会は、あくまでも業界団体ですから、相談に乗ってくれたとしても、どうしても業者寄りの対応になったり、業界内の「常識」で割り切られたりといったことも考えられますから、トラブルの解決といっても限界はあるでしょう。そのような限界があることを念頭においたうえで相談されることをおすすめします。相談しても解決に至らないときは、やはり法律の専門家である弁護士に相談されるのがよいでしょう。
なぜ探偵業法が制定されたのか探偵業法の内容はわかりましたが、現在までそのような法律がなかったのには、何か理由があるのでしょうか。
2025/09/05
口社会・業界の対応探偵・興信所との契約上のトラブルや調査対象者のプライバシーが侵害される事例は、これまでも多く見受けられました。そのため、探偵・興信所に対する規制の必要性がなかったわけではありません。しかし、探偵・興信所の利用者は従来比較的限られていたことや、探偵・興信所を利用する企業は自らトラブルへの備えをしていることなどから、探偵・興所とのトラブルがあまり表面化せず、マスコミ等でも大きく取り上げられることはありませんでした。ようやく平成一八年六月に探偵業法が制定されましたが、このときも大きくマスコミに取り上げられるということもありませんでした。このように探偵・興信所に対する規制の必要性について社会が大きな関心を抱いてこなかったことがこれまで法制化されてこなかった最大の理由ではないかと思われます。また、業界側の事情としても、規制立法の制定でまっとうな事業として社会に認知してほしいと期待する半面、自由な活動に制約を加えられたくないという思惑が働いていたように思われます。探偵・興信所の業界団体は、「自主規制を通じて適正な業務の確保に努めている」という建前があったため本章Q6参照、外部からの規制を嫌う体質が業界の中にあったことは否定できないように思われます。口適正な業務の確保の必要性しかし、探偵業法の制定は、業界の自主規制だけでは適正な業務の確保が難しいということが背景事情としてあります。ここ数年、探偵・興信所をめぐるトラブルが増加しており、今まで以上に多くの人々がトラブルに巻き込まれる可能性が出てきたからです。今後もますます高度化することが予想される情報化社会において、探偵業法が公布・施行され、探偵・興信所のあり方が国民的議論の対象として取り上げられるようになったことは、国民のみならず、業界にとっても歓迎すべきことだといえます。,
探偵業法の問題点は何か探偵業法の内容についてはわかりました。この法律には、どのような問題点があるのでしょうか。
2025/09/05
口久格事由該当者に関する審査探偵業法は、開業時の都道府県公安委員会への届出や報告義務、守秘義務等の業者規制と依頼者に説明書面や契約書面の交付を義務づけた業務規制の二本立ての内容になっています本章Q2参照。探偵業法によれば、都道府県公安委員会への届出さえすれば探偵業を自由に開業することができます。ただし、法律で定められた々格事由に該当する者暴力団員や、五年以内に禁固以上の刑に処せられた者などは、探偵業を営んではならないことになっており同法三条、これまで全く制限のなかった状態からは一歩前進したといえます。公安員会への届出の際、暴力団員や禁固以上の刑に処せられた者などの久格事由の有無が審査されるのか、今のところ明らかではありません。探偵業法では、久格事由に該当する者が探偵業を営んでいるときは公安委員会が営業の廃止を命じることができることとされていますが同法一五条1項、久格事由の有無の審査・調査が確実に行われない限り、その実効性が十分に確保されるか疑問があります。口業務の適正化探偵業法では、探偵業者は、他の法令で禁止または制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意し、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならないと定められています同法六条。しかし、このたびの探偵業法の制定が、探偵業にお墨付きを与えたものと誤解され、行き過ぎた調査活動が行われる可能性もあります。そのようなことがないように、公安委員会等は、探偵業務の適正を確保する必要があります。探偵業法では、探偵業者と依頼者との契約上のトラブルが多発していることから、契約内容を明確にしてトラブルの発生を未然に防止するために書面で重要事項を説明するよう義務づけられました同法八条一項。さらに、依頼者と探偵業務を行う契約を締結したときは、契約内容を明らかにする書面を依頼者に交付することが義務づけられています同条二項。これらの規定に違反して書面を交付せず、法定事項の記載痛れ書面や虚偽の書面を交付したときは罰則1〇万円以下の罰金が科されます同法一九条。しかし罰則が非常に軽いだけでなく、特定商取引法等で導入されているクーリング・オフ制度第二部第一章Q4参照は採用されていません。特定商取引法は探偵業法と同様、事業者から消費者への説明書面や契約書面の交付を義務づけたうえで、クーリング・オフ制度を導入しており、消費者を保護しようとしています。この必要性は探偵業者との契約の場合も同じでしょうから、探偵業法にクーリング・オフ制度が導入されなかったことは依頼者保護に知けるように思われ、今後の課題だといえるでしょう。
探偵・興所への法的規制にはどのようなものがあるか探偵や興信所には、どのような法的規制があるのでしょうか。
2025/09/05
囗探偵業法平成一八年六月八日、探偵業法が公布され、平成一九年六月一日に施行されました。この法律は、わが国で初めての探偵業に対する規制立法です。開業時の都道府県公安委員会への届出や報告義務、守秘義務等の業者規制と、依頼者に説明書面や契約書面の交付を義務づけた業務規制の二本立ての内容になっています詳細は本章Q2参照。探偵業法が制定されるまでは探偵業に関する法的規制はほとんどなく、全国の都道府県の中で唯一大阪府では、「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」が昭和六〇年に制定され、大阪府下で探偵・興信所や探偵業を営もうとする者に届出義務が課せられていただけでした第一章Q2参照。口その他の法規制これが、探偵業への法的規制ですが、実際に探偵業を行う際の調査の仕方に対しては、さまざまな法的規制が及ぶ可能性があります。他人の住居への無断の立入りは住居侵入罪刑法一三〇条になり、電話回線に盗廳器をしかけて通話内容を録音することは電気通信事業法四条に違反することになります。また、盗撮は、刑罰法令に触れなくても被調査者のプライバシーを侵害するものとして不法行為民法七O九条となる可能性があります。個人に関する情報を扱う場合には、個人情報保護法に基づいて取り扱わなければなりません第三部参照。このように探偵業者が調査を行うにあたって抵触しかねない法令がいくつもあります。調査行動を規制するそれぞれの法令の範囲内であればその調査行動は違法とはいえませんが、それを逸脱した場合には調査行動が違法なものとして刑事事件や損害賠償の対象となる可能性があります。探偵業法では、探偵業務を行うにあたっては、探偵業法により他の法令で禁止・制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意すべきこと、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならないと定められています(同法六条)。
探偵や興信所を禁止することはできないのか探偵・興信所をめぐっていろいろと問題があるということを聞きました。そのようなトラブルを起こしているのであれば、探偵・興情所を一切禁止すればよいのではないでしょうか。
2025/09/05
口探偵・興信所の役割探偵・興信所については、調査料金や調査内容などについて利用者と、調査方法などで調査対象者とトラブルがよく起きるようです第二部第一章Q2・Q3参照。このような現状を考えると、トラブルを防止するためには、探偵・興信所や探偵業を一切禁止することも有効な手段の一つかもしれません。しかし、社会には、さまざまな情報の流れがあり、人々は必要な情報を利用して取引をしたり、仕事をしたりしています。このような情報化社会の中で、人々は容易に知ることができない情報を何とか手に入れて、それを自分の利益のために利用したいと考えています。必要な情報をすべて自分で手に入れることができれば、情報の入手に他人の手を借りる必要はないわけですが、現代社会のように情報が氾濫し、人間関係が複雑になってくると、必要な情報をすべて自分で手に入れることはほとんど不可能といえます。このような現状を考えると、探偵・興信所を一切禁止することは現実的な選択とはいえないように思われます。口探偵業者を安心して利用できるためにしかし、悪質な探偵・興信所によるトラブルが絶えないことも事実であり、安心して利用できる良質な業者を育成する必要があります。平成一八年六月に公布された探偵業法では、探偵業を営むことのできる者に一定の久格事由を定め同法三条、暴力団員や禁錮以上の刑に処せられた者などを探偵業から排除しており、従来は何の制限もなく開業できていた探偵業の実態を改めています。また、探偵業開業時の都道府県公安委員会への届出や報告義務や守秘義務等の業者規制と、依頼者に説明書面や契約書面の交付を義務づけた業務規制の二本立ての内容になっています第二章Q2参照。良質な探偵業者を育成するためには、届出制を免許制に改めるなど、探偵業法の規制内容も、より厳しい規制が必要かもしれません。また、不実告知の場合の契約取消権、中途解約権、クーリング・オフといった利用者保護のための規定も必要です。探偵業法は、平成一九年六月一日の施行ですが、法の施行から三年後平成二二年の見直しが予定されており同法附則三条、 このような内容の規制だけで十分なのかどうか、 監督官庁として公安委員会が適切なのかどうかも含めて、抜本的な議論が必要です。
探偵・興信所は危ないといわれるのはなぜか探偵・興信所の歴史にみられる反社会的役割や、その弊害にはどのようなものがありますか。また「化け調」というものもあると聞きますが、どのようなものですか。
2025/09/05
■「化け調」とは「化け調」とは、探偵業界の用語です。依頼者が実在し、依頼者の依頼に基づいて調査することを「本調」あるいは「A調」と呼びます。これに対し、依頼などされていないのに、訪問の相手が探偵・興信所の会員になることを期待して会社訪問することを「化け調」あるいは「B調」といいます。大手企業の名前を出して、「仕事の発注にからめて調査をしている」というと、仕事が欲しい中小企業の事業者は、電話一本で会員権の購入に応じるともいいます。これは依頼などないのに依頼があるかのように装って会員権の購入代金を騙し取るわけですから、明らかに詐欺刑法二四六条に該当します。人の弱みに付け込んだ悪質な犯罪であり、昭和四六年に検挙された大阪の中央経済興信所など、検挙された例は枚挙に暇がありません。役割口調査によって知り得た秘密についての探偵業者の義務探偵や興信所が依頼者等を脅迫するというケースもあります。「脅迫」とは、調査によって知り得た人の秘密をもとにして脅すことです。探偵や興所が脅迫する場合、脅す相手は、調査対象者の場合もあれば、依頼者本人の場合もあります第二部第一章Q11参照。探偵業は人の秘密を知る機会が多くあるだけに、秘密の取扱いには高度の職業倫理が求められますが、モラルに反して金儲けのネタに人の秘密を利用しようという悪質な探偵業者がいることも事実です。探偵業法は、探偵業者に守秘義務と調査報告書等の不正利用を防止すべき措置をとる義務を課して同法一〇条、秘密の不正利用を防止しようとしています。探偵・興信所とのトラブルには、「脅迫」の事例だけでなく、取引にかかわるトラブルやプライバシー侵害にかかわるトラブルもあります。簡単な所在調査を依頼しただけで、法外な料金を請求されたり、追加調査といっては料金を追加で請求されたりなど、これまで探偵・興宿所との契約を規制する法律がなかったため、料金や依頼内容等取引にかかわるトラブルが多発していました第二部参照。また、盗聴や盗撮、聞き込みなど調査対象者のプライバシーを侵害するような調査方法がとられることもしばしばあります第三部参照。新たに制定された探偵業法では、こういったトラブルを防止するための規制が盛り込まれました第二章Q2参照。
私は昔から興味があって、探偵の仕事をしたいと思っています。実際に探偵になるためには、何か資格が必要なのでしょうか。
2025/09/05
口資格は必要ない現在では、探偵業を行うために資格や免許は特に必要ありません。探偵業者は、あくまでも依頼者の要望に応じて、私的にいろいろな事柄の調査をし、報告を行っているにすぎません。外国には探偵業を行うために資格や免許を必要とする国がありますが、わが国には法的規制はありません。平成一八年六月に、探偵業法が制定され、平成一九年六月一日から施行されています。この法律はわが国で初めての探偵業に対する規制立法です。探偵業開業時の都道府県公安委員会への届出や報告義務、守秘義務等の業者に対する規制と、依頼者に対する説明書面や契約書面の交付を義務づけた業務に対する規制の二本立ての内容になっています第二章Q2参照。探偵業法の施行により、探偵業を行おうとする者は都道府県公安委員会への届出が必要となり、法令違反行為があれば探偵業の営業停止や廃業が命じられることがありますが、資格や免許が特に必要とされるようになったわけではありません。■大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例全国の都道府県の中で大阪府では、「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」が昭和六〇年に制定され、大阪府下で興信所や探偵業を営もうとする者に届出義務が課せられています同条例六条。この条例は、明治五年に編製された「王由戸籍」などをもとに、被差別部落地域出身者に対する就職差別や結婚差別などが多発したことから、そのような部落差別事象の発生防止を目的として制定されたもので、一般的な業者規制というよりも、同和対策立法の一っといえます。口探偵業のノウハウが必要探偵業を営むために資格や免許は必要ありませんが、探偵業を行うためのノウハウは必要です。依頼者が必要とする情報を入手するためには、それなりの熟練と技術が必要になるのです。個人の所在や素行調査にあたっては、戸籍・住民票等調査、聞き込み調査、尾行や張り込みなどが行われ、場合によっては盗聴や盗撮が行われることがあります。企業の信用情報の調査であれば、法人登記簿や決算書類の調査、役員との面接調査等が行われますが、調査を行うには調査対象者からも用を得る必要があります。